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篠島 おんべ鯛奉納祭の旅

おんべ鯛奉納祭
おんべ鯛奉納祭

 鳥羽港周辺には4つの離島があり、一番遠くに浮かんでいるのが神島である。鳥羽の佐田浜港から神島までは市営船で5回ほど通ったが、その先の伊良湖岬には一度もなかった。10月11日、篠島で行われるおんべ鯛奉納祭を見るために、初めて渥美半島の先端、伊良湖へいった。
 伊良湖から篠島まで高速船が走り、短い滞在時間のなかで日本の夕日百選に選ばれた「松島の夕日」も一目見ようと、16時15分発の最終船に乗って篠島へ上陸した。日の沈む前に歌碑公園へ着こうと必死に坂道を登り、すれ違う中年夫婦から“今日は残念ですね。”とやさしく声をかけられる。西の空には秋雲が放射線状に拡散していて、夕日が見えなくでも異様な海空に包まれた。
 12日朝7時頃、篠島魚市場では色とりどりの大漁旗が掲げられ、大勢の人々で賑わっていた。暫くして「おんべ鯛奉納祭」と呼ばれる干鯛を伊勢神宮へ奉納する神事がはじまる。
 伊勢神宮の神嘗祭では、その年にとれた新穀のほかに、鮑や野菜などさまざまな食物が神饌として神様に供えられる。その中で欠かせないものの一つに「干鯛」がある。これは必ず篠島の鯛と決められ、800年前の鎌倉時代から「太一御用」の幟を掲げて奉納する伝統行事である。

松島の夕日
松島の夕日

おんべ鯛奉納祭
おんべ鯛を奉納船へ

 干鯛のお祓い儀式や地元小学生らの鼓笛隊による演奏のあと、おんべ鯛が納められた2台の唐櫃(からびつ)が奉納船に乗せて伊勢神宮へと出航した。太一御用ののぼりを掲げた6艘の船隊に、女将さんを乗せた小船が後を次いて伊勢湾を横断する。地元の小学生やちびっこたちは長蛇の列に並んで手を振った。後に、おんべ鯛は伊勢湾を渡って伊勢市の神社港に上陸し、内宮に奉納される。
 鳥羽にもどるフェリーで、振り返る篠島は青から黒の一点に集約して徐々に目線から消えてゆく。しかし、おんべ鯛奉納祭への記憶は何度も浮かんでいた。

おんべ鯛奉納祭
奉納船が伊勢湾を渡り、伊勢市の神社港へ

おんべ鯛奉納祭
伊勢神宮へ奉納する