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潮騒の国−神島紀行(二)ゲーター祭

神島ゲーター祭
アワを空高く持ち上げる 2010年1月1日

 神島は鳥羽市佐田浜港の北東に約14km、渥美半島の伊良湖岬の西方から約3.5kmの伊勢湾口に位置する周囲3.9qの三角形島で、標高171mの灯明山を中心に島全体が山地である。漁港周辺斜面には民家が密集し、島民のほとんどが漁業で生計を立てている。
 人口500人ほどの小さな島に、元旦未明の奇祭として知られるゲーター祭がある。今年(2010)は30年に一度の元旦と満月の日が重なることもあって、大晦日から潮波が激しく、予定の神島行きの船便は中止になった。諦めようとした頃に最終便が奇跡的運行し、逆巻く波に翻弄されながら神島へ赴いた。
 夜7時ごろ、神島の漁協で「宮持」とその親類縁者30人ほどが集合し、大晦日夜のアワ作りがはじまった。グミの枝を束ねて荒縄で縛り、直径約2mの輪ができると、その上へ上へと半紙、障子紙を幾重に巻き付けてアワが完成する。会場内には終始、「オーヨイヨイヨイ、ヨイサヨイサヨイサ」の掛け声が響いた。
 元旦の未明、潮風が吹き荒れるなかで島民達が次々と海岸沿いに集まった。6時半ごろに、アワ(日輪)を抱えて練り歩く白装束の一団が現れると、女竹を持つ男たちが総出で迫力のアワ突きが始まった。あっという間にアワは中空に舞い上がり、竹の摩擦音、潮騒とともに弦妙な光景が拡げられた。突き落とされたアワは担がれ八代神社に奉納される。

大晦日夜のアワ作り サバ作り(もちの木を12角柱にし、30の切り込みを入れる) 今年の「宮持」 いよいよゲーター祭が始まる
大晦日夜のアワ作り サバ作り 今年の「宮持」 元旦の未明、潮風のなか
神島のゲーター祭 神島のゲーター祭 神島山海荘での海の幸(旬の料理) 神島船着場で
アワを担ぐ勇壮な姿 アワを空高く持ち上げる 神島山海荘での海の幸 神島船着場で大晦日の帰郷人を待つ

 ゲーター祭は「天に二つの日輪なく、地に二皇あるときは世に災いを招く。若し日輪二つある時は、神に誓って偽りの日輪は是の如く突き落とす」の古き由縁を表したとも言われ、諸悪を払い、無事平穏な年の願いを込めた祭である。
 人々は個と集団を併せつつ、社会を成している。助け合う共同体の素朴で温かな神島の民衆生活に観られる善く立ちかえる祭りには、遥か祖先へのつながりを自覚する現れでもあろう。