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南伊勢町斎田に山の神さん祭礼

 今年夏ごろに初めて南伊勢町斎田へいった。斎田には山の神が鎮座し、横には斎田川が流れている。斎田の山の神さん祭礼は毎年12月8日に近い日曜日と決まっていて、早朝の5時ごろから行われると地元の方から聞いた。12月4日(日曜)の朝、斎田の山の神さん祭礼を見ようと5時頃に斎田へ着いた。周りは真っ暗で人影もない。5時20分ごろ、地元の人々が徐々に集まり、斎田川沿いにある山の神の祠にお参りし、前日に用意された松明に火をつけた。地元参拝者には餅やお神酒が渡され、長さ5mほどの笹竹先端に餅を刺してどんど火で焼く。私にも2個渡され、焚火で焼いて美味しく頂いた。

南伊勢町山の神さん祭礼
新しく奉納された木の男根

南伊勢町山の神さん祭礼
山の神さんの祠と一列の男根

 山の神さんの祠は岩壁の下にあり、横には合歓の木で作られた男根が列を並んで供えられている。山の神は一般に女神であるとされ、繁殖能力が強い神と言われる。農民や山民にとって山の神の実体は祖霊であると言われ、正月にやってくる年神も山の神と同一視される。そして山は農耕に欠かせない水の源であるということや、豊饒をもたらす神が遠くからやってくるという来訪神の信仰があり、山民にとっての産土神でもある。

南伊勢町山の神さん祭礼
早朝の5時半から松明に火をつける

南伊勢町山の神さん祭礼
焚火に餅を焼く山村の人々

 地元の元老に聞くと、山の神さん祭礼は昔からあり、一時偲びのもので、これからどうなるかわからない、といわれる。南伊勢町斎田は古くから大半が山林業に携わり、今はサラリーマンがほとんどで山林を生業としている人はもういないそうだ。

南伊勢町山の神さん祭礼
焚火に燃える紅葉

南伊勢町山の神さん祭礼
帰る道で見る南伊勢町の朝風景

 午前6時半ごろには日光も射し込んで、清流に紅葉も綺麗に照らされ、焚火に餅を焼く山村の人々の姿がとても懐かしく思えた。