ホーム>

民俗行事を焦点に、「躍る異界」李相海写真展

「躍る異界」李相海写真展
「躍る異界」李相海写真展

 2007年、伊勢志摩へ来てから日本の祭りが好きになりました。伊勢志摩では伝統の祭りが多く、仕事の合間を縫って祭りに出かけ、写真や記事を「日本紀行」サイトに掲載し、広く紹介してきました。2010年からは日本各地へ足を延ばし、多くの民俗行事を捉えました。
 日本の美しい自然や、土地と調和した伝統文化は、その土地に住む先人の絶え間ない努力と智慧の賜物だと存じます。そして土地の匂いがする祭りには自然と先祖との繋がりを感じさせます。
 今回の写真展では民俗行事を焦点に、主に火祭りと仮面の姿で現れる鬼神など異次元で躍動的な部分を切り取った30枚を用意いたしました。イメージとしては赤(情熱・活気・生命)をメインに、黒(幽玄・静寂)を少し加えた感じです。
 日本三大火祭りに数える長野県・野沢温泉の道祖神祭、京都市・鞍馬の火祭、和歌山県・那智の火祭り、それ以外の福岡県・鬼夜、愛知県・鳥羽の火祭りなど、炎が乱舞する場面はすべての煩悩や不浄が焼き尽くすかのように、心を清らかにさせます。
 南信州・遠山郷で徹夜を陶酔するかに舞い踊る霜月まつりでは、鬼神に化けて登場する祖霊と村人がともに釜の湯で禊ぎ、邪悪を振り払うことで魂を蘇えり、新たな年を迎えます。
 日常と非日常、俗と聖、内と外など、物事は常に二元化され、境界によって秩序が保たれています。時を定めて境界という場に、異形の姿で現れる来訪者(マレビト)や祖霊を歓待して見送る儀礼はすべて邪を祓い、豊穣や再生を願う民衆生活の精神文化であり、自然と人間が深く関わる「畏敬」の念が宿る聖なる場として長く伝えられてきました。
 写真展を通じて、寸暇を惜しんで追い続けた日本の祭りに一人でも共感を呼んで頂ければ幸いです。(李相海)
写真展の部分作品

陀々堂の鬼走り(国重文) 御燈祭(国重文)和歌山県 那智の扇祭り(国重文)和歌山県
陀々堂の鬼走り(国重文)奈良県 御燈祭(国重文)和歌山県 那智の扇祭り(国重文)和歌山県
「海女礼賛」李相海写真作品(七) 野沢温泉の道祖神祭り 鳥羽の火祭り(国重文)
大善寺玉垂宮の鬼夜(国重文) 野沢温泉の道祖神祭り(国重文) 鳥羽の火祭り(国重文)愛知県
秋田竿燈まつり 西大寺の会陽(国重文)岡山県 青森ねぶた祭
秋田竿燈まつり(国重文) 西大寺の会陽(国重文)岡山県 青森ねぶた祭(国重文)
奈良豆比古神社の翁舞(国重文) 安乗文楽(国重文) 霜月まつり長野県
奈良豆比古神社の翁舞(国重文) 安乗文楽(国重文)三重県 霜月まつり(国重文)長野県
御柱祭長野県諏訪市 諏訪大社(上社) 和合の念仏踊(国重文) 新野の雪祭り長野県
御柱祭(長野県) 和合の念仏踊(国重文)長野県 新野の雪祭り(国重文)長野県

展示期間/2016年10月7日(金)〜10月25日(火)
展示会場/鳥羽ショッピングプラザハロー 2階催事場 
三重県鳥羽市大明町1番1号  TEL 0599-26-3309
「躍る異界」李相海写真展(PDF 12.3MB)

「躍る異界」李相海写真展
写真展会場

「躍る異界」李相海写真展
写真展様子

■『毎日新聞』三重版(2016年10月7日 掲載)
躍動する民衆、勇壮な火祭り 全国の民俗行事30点(中国人ホテルマン・李相海さん、きょうから鳥羽で)
 全国各地の民俗行事の撮影を続ける鳥羽市安楽島町の中国人ホテルマン、李相海さん(45)の写真展「躍る異界」が7日、同市大明西町の鳥羽ショッピングプラザ・ハローで始まる。鬼面をかぶり躍動する民衆や勇壮な火祭りなど、非日常的な世界を切り取った作品30点が展示されている。25日まで。
 中国遼寧省出身の李さんは、地元の師範大学を卒業し、3年間の教員生活後、1998年に三重大に留学。卒業後、自動車部品メーカーで働き2007年、鳥羽シーサイドホテルに入社した。伊勢志摩地方の民俗行事や海女に関心を寄せ撮影対象も伊勢志摩から全国へと広がっている。
 写真展は「異次元の世界をテーマに想像力をかき立てる民俗行事にスポットを当てた」と李さん。「降る雪、踊る炎」(長野県野沢温泉村の道祖神祭)、「幻の夜明け」(鳥羽市神島のゲーター祭)などを展示する。
 作品「善鬼」は、奈良県五條市の念仏寺の「陀々堂の鬼走り」が題材。悪鬼と疫病を追い払う儀式で、李さんは「自分の中に宿る悪と善を、鬼に見透かされているような気持ちになり、夢中でシャッターを押した」と語る。(→ニュースサイトで読む:毎日新聞より)

■『読売新聞』三重版(2016年10月20日 掲載)
全国の祭礼 迫力の写真 鳥羽の中国人ホテルマン 展示
 伊勢志摩の写真を撮り続けている鳥羽市安楽島町の中国人ホテルマン李相海さん(45)が、全国の祭礼を取材した写真展「躍る異界」を、同市大明西町の鳥羽ショッピングプラザ・ハローで開催している。25日まで。
 李さんは中国・遼寧省出身。三重大卒業後の2007年、同市の鳥羽シーサイドホテルへ入社。休日には、カメラを手に地域の風物を撮影し、これまでに伊勢志摩の自然や祭礼、海女などをテーマにした数々の写真展を開催、写真集も出版している。
 「伊勢志摩の祭りを取材する中で、全国のほかの祭りも見てみたくなった」と今回は、11年から今年9月までに取材した全国28か所の祭礼の写真計30点を展示した。北海道木古内町の「寒中みそぎ祭り」、長野県飯田市の「霜月まつり」、愛知県東栄町の「花祭」、奈良県五條市の「陀々堂の鬼走り」、鹿児島県・奄美大島の「油井の豊年踊り」などで、火祭りを撮影した作品が多く、圧倒的な迫力で、見る人の想像力をかき立てる。
 また、伊勢志摩を写真と文章で紹介するインターネットサイト「日本紀行」を08年に開設、更新を続けている。10年に始めた中国語サイトは延べ6000万人が閲覧、台湾や中国のブロガーによる引用も多くなったという。
 今回の写真もインターネットに掲載しており、「暗闇の中の炎や鬼などを撮影するうちに、自分の心が次第に清められた。非日常の世界に感動した思いを伝えられたら」と話している。